すごいところは沢山あるのに、素直に面白かったと言えない、ラストランカーというゲームの話

戦士ランキング1位を目指すゲーム。


こう聞いたとき、ぱっと思い浮かんだのは、自分より格上の相手を、やり方次第では倒せて、そこで頭を使わせてくれるような、そんなゲームだった。
あるいは「どのように」ランクを上げていくかに幅のある、自由度の高いゲーム。


しかしそのような期待に添うゲームではなかった、というのが、素直に面白かったと言えない理由なのだと思う。


逆転裁判のプロデューサー、世界樹の迷宮のディレクター、FFのシナリオ、ライブ・ア・ライブの音楽、ブレスオブファイアのキャラデザ、という、
どれも1度は遊んだゲームのスタッフが集まって作られたゲームという事で、発売前から注目していた。
コンセプトの中に1対1のバトル、というのがあって、それでどのくらい面白さが出せるものかというごく個人的な興味もあった。


実際手にとって遊んでみると、至る所のクォリティが高く、何度もうならされた。以下箇条書き。

  • バトルは誤解を恐れず言うならばFFのアクティブタイムバトルの1対1版。テンポが良く、緊迫感もあり、倒したときの爽快感もある。
  • 戦う相手であるランカー、90人くらいいるのだが、それぞれが個性豊かで飽きない。次にどんな相手と戦えるのかがゲームのモチベーションになる。
  • グラフィックが良い。バトル画面のカメラワークとか構図が対峙してる感を演出している。キャラ造形も自分がやったWiiのゲームよりあらが少ないと感じた。
    • 個人的には主人公ジグの造形が秀逸だなあと思っている。マッチョすぎず、かといって線が細すぎない。こいつなら1位になれそう、な雰囲気は出てると思う。
  • 音楽が熱い。下村さんさすがすぎる。個人的には戦闘曲のボーカル曲2曲がお気に入り。
  • 声優豪華。俺がすぐ別の役名が浮かんだのだけでも、マクロスFのミシェル・アルト・シェリル、グレンラガンのシモン・ヨーコ、ギアスのルルーシュ攻殻SACのクゼ、エウレカセーラームーンなどなど。
    • で、無駄に豪華なんじゃなくて、ボイス付きのイベントは沢山あって、その豪華な声優陣の熱演に支えられてイベントシーンは熱くて素晴らしい出来。
    • あと本題からずれるけどハース役の関智一さんの役の幅がユニバース。ドモンのイメージが一番強いけど、巽完二もダルも同じ人の声とか信じられん…
  • 目的地への移動がショートカットできたり、自分が負けたら戦闘のやり直し(一旦メニューに戻る事も出来る)が可能だったりと、遊びやすさにはものすごく気を遣ってあり、実に快適。
  • シナリオはやや厨二が入った、熱い感じ。FF7/8あたりの野島テイストに近く、ダメな人はダメかもしれないが、個人的にはまああり。
    • 敵役がちゃんと憎らしい。序盤、自分より強い、なめた態度の後輩が出てきてほんとにむかつく。あとランキング2位の奴が近年まれに見る外道キャラでぶっ倒したくなる事請け合い。
  • ほぼ全くレベル上げが不要。ゲームを普通に進めていると順調にレベルが上がり強い敵も倒せるようになる。
  • 俺がクリアしたのは25時間。だいたい20〜30時間くらいらしく、無駄に長くないのが良い。


と、これだけ良いところがわんさとあるにもかかわらず、プレーしている間ずっと、そして終わっても、物足りなさを引きずり続けた。


ランクを上げる方法は大きく分けて「上位のランカーを倒す」「クエストをクリアする」の2つ。
しかし、ランクが大きく離れたランカーは相手をしてくれない。また、クエストの受注も規定のランクに達していないとできない。
つまり、どういう手順でランカーを倒しクエストをクリアし、ランクを上げていくかは、最初からほぼ1本道で決まっている。
そしてクエストの内容は、「どこどこに行って何々を倒してくる」「どこどこに行って何々を取ってくる」という、典型的なお使いパターン。


ランカー戦も、先に書いたとおりそこそこ面白いのだけど、勝ちパターンを確立してしまうとそれでほとんど変更なしでいけてしまう上に、
自キャラのカスタマイズ画面のインターフェースが非常に悪く(なんであれを操作系ごと斜めにしたのか非常に理解に苦しむ)、
せっかく新しいスキルを手に入れても試してみようという気になれず、結局そのまま進んでしまう。
ちなみに俺は二刀流と盾を中盤から最後までずっと使ってた。


というわけで、実際のゲームのコアの部分が割と淡々と進んでいく感じで、これが個人的にはずっと物足りなかった。


ただまあ、なんというか、そういう点が気になるのは、たぶん俺がRPG依存症の重症患者だからでありw、
ゲームはさくっと遊ぶぜ、という人には全然関係ない部分なのだと思う。
なのでそう言う人には、非の打ち所のない素晴らしいJRPGとして、ラストランカーをおすすめしたい。
俺と同類だと思う人は、上記の点に注意しつつ、手を出してみれば良いと思う。
上記の点に目をつぶれば、良作として楽しめると思うから。
ただし、1本のゲームで長く遊びたいという人には、このゲームは向いてないので、他のゲームを当たるのが吉。


ラストランカー - PSP

ラストランカー - PSP

こっから余談。


もっと印象的な部分の話をすると、正直ラストランカーは「きれいにまとまりすぎてる」という印象が否めない。
こういう要素をそろえれば売れるだろ、みたいなのが透けて見えなくもない。
実際、同じカプコンから出てるオリジナル新作タイトルのゴーストトリックが初週30000本なのに対して、ラストランカーは初週70000本(DSの方が分母は大きいのに!)なので、
まあ実際売れている。その辺は、松川Pさすがすぎるって話ではあるけれど。
しかし、なんだろうなあ、その…、面白さのオーラ的なものがでてないっていうか。主張してないっていうか。
なんか、もっとゲームってさ、作った側の、なんか、ひずみというかゆがみというか、どろっとどす黒い何かというか、
訴えかけてくる何かって、あるんじゃないかなあという。ラストランカーからは、そういう臭いがしなくて。
いや、自分でも何を言ってるんだって感じだし、こんな事を言っている自分が若干きもいけれども。


サマーウォーズに拒否感を示している人の言いたい事ってこれに近い事だったりするのかな、とか思った。
ジャンル違うけど。そして俺はサマーウォーズは大好きだけど。